VLAN はネットワークを論理的に分割するネットワーク技術のことです。
同じ VLAN 機器同士の通信を可能にします。
もう少し詳しく説明していきます。
そもそも「LAN」とは
LANは、物理的に接続されたネットワークグループのことです。
もう少し詳しい言い方をすると、LANは「建物内で複数のコンピュータが相互通信する限られた範囲のネットワーク」のことです。
「Local Area Network」の略称で「構内通信網」と訳されたりします。
「VLAN」とは
VLAN は、その名の通り「仮想的なLAN」のことです。
もう少し詳しい言い方をすると、VLANは「番号で識別される論理的なネットワークグループ」のことです。
VLAN は、「階をまたがるグループ」「部屋をまたがるグループ」のように、物理的な設置環境にとらわれず論理的にグループを作成することができます。
VLAN は、スイッチに接続されたホストをいくつかのグループに分けるために利用されます。
VLAN は、大きいネットワークの中に仮想的に小さなネットワーク (サブネットやセグメントと呼ばれる) を作ります。
「家」を大きなネットワークとして例えると、VLAN は、「リビング」や「寝室」「自分の部屋」という小さなネットワークを作るという風に考えると良いでしょう。
VLANの実態
では、VLAN の実態は一体どういうものなのでしょうか。
VLAN の「限られた範囲のネットワーク」という意味は、実際には「ネットワークセグメント」と呼ばれています。
「ネットワークセグメント」は、例えば、会社内の部署「総務部」や「人事部」、学校でいえば「職員室」や「パソコン教室」、家庭でいえば「リビング」や「自分の部屋」というような、分割された部屋のようなもののことを指します。
「ネットワークセグメント」をもっと具体的に言うと「ネットワークアドレス」になります。
例えば、「総務部」と「人事部」のネットワークアドレスが以下だとします。
総務部のネットワークアドレス
172.16.10.0/24
人事部のネットワークアドレス
172.16.20.0/24
VLAN は、このネットワークアドレスに「VLAN番号」を割当てるという思考をもって設計します。
VLAN番号は、スイッチングHUB (以下、スイッチ) のポートごとに設定することができます。
後から見てもすぐネットワークアドレスが想像できるように、例えば以下のように VLAN番号を割当てます。
総務部のVLAN ID
VLAN 10
人事部 のVLAN ID
VLAN 20
このように設定した後に、総務部のPCを「VLAN10」に所属させ、人事部のPCを「VLAN20」に所属させれば、VLANネットワーク構築が完了です。
では、どうやって PC を VLAN に所属させるのかというと、具体的には以下の2項を実施します。
総務部のPC
項1. IPアドレスを「172.16.10.1~172.16.10.254」の範囲で設定する
項2.「VLAN10」が設定されたスイッチポートに接続する
| PC名 | IPアドレス | 備考 |
| 総務部PC1 | 172.16.10.1 | VLAN10設定済みポートへ接続 |
| 総務部PC2 | 172.16.10.2 | VLAN10設定済みポートへ接続 |
| 総務部PC3 | 172.16.10.3 | VLAN10設定済みポートへ接続 |
| ・・・ | ・・・ | ・・・ |
人事部のPC
項1. IPアドレスを「172.16.20.1~172.16.20.254」の範囲で設定する
項2.「VLAN20」が設定されたスイッチポートに接続する
| PC名 | IPアドレス | 備考 |
| 人事部PC1 | 172.16.20.1 | VLAN20設定済みポートへ接続 |
| 人事部PC2 | 172.16.20.2 | VLAN20設定済みポートへ接続 |
| 人事部PC3 | 172.16.20.3 | VLAN20設定済みポートへ接続 |
| ・・・ | ・・・ | ・・・ |
VLANを利用するメリット
VLANを利用しない場合のネットワーク構成
VLAN を利用しない場合、ネットワークを2つに分割するためには、2台のスイッチが必要になります。
今回の目的
VLANを使用せずに、会社内の「総務部」と「人事部」のネットワークを分離したい。
※ 今回の例では、ルータに適切な設定をしたうえで、スイッチを2台用意します。
機器構成
ルータ (port1) - スイッチA (総務部PC接続用)
〃 (port2) - スイッチB (人事部PC接続用)
ネットワークセグメント
総務部セグメント 172.16.10.0/24
人事部セグメント 172.16.20.0/24
ルータのルーティングテーブル例
ip route 172.16.10.0 255.255.255.0 port1
ip route 172.16.20.0 255.255.255.0 port2
複数台のスイッチを利用したネットワーク構成例
「ルータ」のポート1には、「スイッチA」が接続されています。
「ルータ」のポート2には、「スイッチB」が接続されています。
「総務部のPC」は「スイッチA」に接続されています。
「人事部のPC」は「スイッチB」に接続されています。

このようなネットワーク構成にすることで、「総務部」と「人事部」のネットワークを分割することができます。
今回の VLAN を利用しない構成では、2つのネットワークに分割するために2台のスイッチが必要でした。
もし、ネットワークセグメントが「10個」ある場合、スイッチの台数も「10台」必要になります。
VLANを利用したネットワーク構成
VLAN を利用しない場合、「総務部」と「人事部」のネットワークを分割するにはスイッチが2台必要となりましたが、VLAN を利用するとスイッチ1台で済ますことができます。
今回の VLAN を利用したネットワーク構成例では「8ポートスイッチ」を利用するとします。
PC が接続できるポートが8つあります。

例えば、PC やルータなどの機器を以下のようにスイッチポートに接続します。
・ ポート 1~3: 総務部の PC を接続
・ ポート 4~6: 人事部の PC を接続
・ ポート 8: ルータを接続
例えば、VLAN を以下のようにスイッチに設定します。
・ポート 1~3: VLAN 10 を設定
・ポート 4~6: VLAN 20 を設定
実際のスイッチには、以下のようなコンフィグが設定されています。
interface GigabitEthernet 0/1
description SohmuPC
switchport access vlan 10
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/2
description SohmuPC
switchport access vlan 10
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/3
description SohmuPC
switchport access vlan 10
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/4
description JinjiPC
switchport access vlan 20
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/5
description JinjiPC
switchport access vlan 20
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/6
description JinjiPC
switchport access vlan 20
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/7
switchport mode access
!
interface GigabitEthernet 0/8
description Router
switchport mode trunk
!
interface GigabitEthernet スイッチの物理ポート番号を表します。 switchport access vlan スイッチポートに設定されているVLANを表します。 description そのスイッチポートの用途説明です。 人間に分かりやすいようにするために書くもので、スイッチの動作に影響はありません。
このように、各スイッチポートにVLANを設定し、PCを適切なスイッチポートに接続することで、
「総務部のPC」は、「VLAN 10」に所属
「人事部のPC」は、「VLAN 20」に所属
させることができます。

結果、スイッチ1台でも、ネットワークを分割することができました。
まとめ
LAN を簡単にいうと「建物内で複数のコンピュータが相互通信するグループ」のこと。
VLAN を簡単にいうと「番号で識別される論理グループ」のこと。
VLAN は、ネットワークアドレスに「VLAN番号」を割当てるという思考をもって設計する。
VLAN を利用することで、スイッチポートごとにネットワークセグメントを割り当てることができるため、用意するスイッチの数を減らすことができる。
VLAN を利用するとスイッチの物理な配置を考えなくていいため、階をまたがったネットワークセグメントを構築するなど、柔軟なネットワーク設計ができる。

























